先端巨大症・下垂体性巨人症

先端巨大症・下垂体性巨人症は成長ホルモンの過剰による異常発育及び代謝異常を呈する疾患です。97%が下垂体腺腫が原因で、同時にプロラクチンも分泌されることもあります。発症時期が骨端線の閉鎖前なら下垂体性巨人症、閉鎖後なら先端巨大症となります。男子なら15歳頃、女子は13歳頃が骨端線閉鎖の時期です。骨端線が閉鎖する前であれば身長の成長があるため下垂体性巨人症は身長が高いですが、先端巨大症では身長はそれほど高くはなりません。年間発症率は100万人あたり3-5人程度とされています。

症状は成長ホルモンとIGF-Iによる症状と下垂体腺腫による局所症状を分けて考えます。

ホルモンによって手足の容積の増大や下顎突出などの容姿の変化が生じ、下垂体腺腫によって視交叉が圧迫されると視力や視野に障害が生じることもあります。

成長ホルモンの影響で糖尿病や高血圧、脂質異常症を呈することもあります。閉塞性睡眠時無呼吸症候群も合併しやすいです。心肥大や冠動脈疾患、悪性腫瘍(大腸癌、乳癌、甲状腺がん)が死因として大切です。

顔貌変化と手足の容積増大はほとんどの症例で見られます。女性では月経異常を伴うこともあります。

先端巨大症を早期発見はできるのでしょうか。顔貌変化を本人が気づけば精査するかもしれません。ただ、先端巨大症様顔貌の画像をネットで検索して色々見てみましたが、顔だけだと普通にいるのではと思ってしまうようなものもありました。。発汗過多を70%程度に認めるため、発汗過多の場合は甲状腺のみではなくこの疾患も頭に入れた方が良いかもしれません。

診断はホルモン異常の証明と下垂体腺腫の証明です。

症状で本疾患を疑ったらスクリーニング検査としてホルモンを検査します。

この疾患に関係する主なホルモンは成長ホルモンとIGF-I(インスリン様成長因子I)です。

成長ホルモンは脈動的分泌で変動が大きいですが、IGF-Iは変動が少なく、スクリーニングや疾患活動性に有用です。この2種類をスクリーニング検査で提出します。

画像検査ではCTやMRIで下垂体腺腫の証明が必要です。

診断基準は主徴候と検査所見を両方満たす例です(島津 章,他:先端巨大症及び下垂体性巨人症の診断と治療の手引き.2015.)。

Ⅰ主徴候

  • 手足の容積増大
  • 先端巨大症様顔貌
  • 巨大舌

Ⅱ検査所見

  • 成長ホルモン分泌の過剰(血中成長ホルモン値がブドウ糖75g経口投与で正常域まで制限されない)
  • 血中IGF-I高値
  • MRIかCTで下垂体腺腫を認める

Ⅲ)副徴候及び参考所見

  • 発汗過多
  • 頭痛
  • 視野障害
  • 女性における月経異常
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • 耐糖能異常
  • 高血圧
  • 咬合不全
  • 頭蓋骨及び手足の単純X線の異常

診断基準を見ると、血液検査は普段成長ホルモンやIGF-Iをとる機会は無いと思われるます。副徴候もよく見るものが並んでおり、特異的なものは無さそうです。やはり顔貌+手足の状態が大切そうです。

治療は手術が第一選択で適応がなければオクトレオチドの徐放性剤、ブロモクリプチンやカベルゴリン、定位放射線治療などが選択肢となります。疾患頻度も少ないため、ここらへんは一般内科医が介入する機会はないと思います。早期診断と治療でその後の合併症や可逆的な臨床症状を軽減されるために、見逃さないようにしたいですね。

(参考文献)

間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き,日内分泌会誌95.2019.

生理食塩水負荷試験

生理食塩水は原発性アルドステロン症の機能確認検査の1つです。

心機能、腎機能低下例では行えません。

生理食塩水を4時間かけて2L点滴静注し負荷後のPACが60pg/mL以上で陽性とします。

負荷が強いため心不全などのリスクがあるため入院しながら行います。

午前中安静臥位30分で採血→生理食塩水2L/4時間→安静臥位30分で採血→PAC確認といった手順です。

経口食塩負荷試験

経口食塩負荷試験は原発性アルドステロン症の機能確認検査の1つです。

NaCl負荷を3日間行い、その後24時間蓄尿を行い尿中アルドステロンが6μg/日以上で陽性とします。NaCl負荷は食塩10-12g/日を3日間連続で行います。

食塩12g/日を3日間→4日目に24時間蓄尿といった流れです。

上記は入院での流れです。この検査が外来でも行えます。

その際は、食塩負荷は行いません。食事制限などはなく3日間過ごしてもらい、4日目に24時間蓄尿を行い尿中Naが170mEq/日以上でその際の尿中アルドステロンが8μg/日であれば陽性とします。

フロセミド立位負荷試験

フロセミド立位負荷試験は原発性アルドステロン症の機能確認検査の1つです。

フロセミド40mgを静注し2時間立位後のPRAが20ng/mL/時以下で陽性とします。

午前中に30分安静臥位で採血→フロセミド40mg静注→2時間立位(歩行可能)→座位で採血といった流れです。立位が基本ですが、トイレの際の座位は可能です。

2時間立位は結構つらいと思います。

カプトプリル負荷試験

カプトプリル負荷試験は原発性アルドステロン症の機能確認検査の1つです。

カプトプリル50mgを経口を投与しARRが200以上で陽性とします。血圧低下に注意が必要です。

カプトプリルはACE阻害薬です。内服するとレニンが上昇、アルドステロンが低下します。しかし原発性アルドステロン症ではアルドステロンの自立性分泌があるためアルドステロンが低下せず、レニンの上昇もないです。このことを確認する検査で外来で実施できます。

やり方は、外来で午前中に行います。まず安静臥位採血でARRを提出し、カプトプリル内服し60-90分後に再度安静臥位採血を行うだけです。安静臥位は30分が理想ですが、外来のベッドの状況も考慮する必要があります。最低15分は安静臥位にして採血が望ましいです。

原発性アルドステロン症(PA)

血中アルドステロン濃度が高値の時は原発性アルドステロン症と続発性アルドステロン症を鑑別しますが、今回は原発性アルドステロン症について記載します。

原発性アルドステロン症は副腎からの自律的なアルドステロンの分泌と血漿レニン活性の低値が特徴とされる疾患です。低K血症を認め血圧高値なら疑いやすいですが、75%はK正常であるため、低K血症がなくても高血圧というだけで疑った方が良いと思います。高血圧の患者さんで精査してPAということは良く経験します。循環血漿量は増加しますが、浮腫は伴いません(アルドステロンエスケープ)。脳心血管障害の発症率が本態性高血圧より高いとされており、適切な診断と管理が大切です。

治療は片側病変であれば手術(腹腔鏡下副腎摘出術)が可能ですが、両側性であれば薬物療法がメインとなります。私は内科医であるため、薬物治療しか経験はありませんが、よくみるコモン疾患です。

午前中に安静座位30分後に血液検査を行い、血漿アルドステロン濃度(PAC)/血漿レニン活性(PRA)の比であるARRを求めます。これが200以上、かつPACが60pg/mL以上でスクリーニング陽性とします。ARRではなくPA/血漿活性型レニン濃度(ARC)の比を用いてスクリーニングすることもあり、こちらは40以上が必要です。ただしARRが100-200の間はARR境界域とされており、その際もPACが60pg/mL以上あれば暫定陽性とできます。

このスクリーニング検査を行う場合、すでに降圧薬を内服している場合、

MR拮抗薬;4週間以上

β遮断薬、利尿薬、ARB/ACE阻害薬;2週間以上

上記の休薬期間が必要です。Ca拮抗薬、α遮断薬は休薬しないで大丈夫です。

また、レニン活性は脱水や塩分制限している場合は上昇傾向を示し、高齢者や慢性腎臓病の場合は低値となることがあり解釈には注意が必要です。

今まで記載した検査はスクリーニング検査です。これでひっかかる場合、機能確認検査を行います。機能確認検査には

があります。以前は機能確認検査で2種類が陽性で診断としていましたが、現在では1種類で大丈夫です。ただし、低カリウム血症を認め、PACが100pg/mL以上でレニンが検出限界以下という3つの項目全て満たした場合は、機能確認検査なしでPAと診断できます。

副腎腺腫の確認のために腹部CTを行いますが、小さい腫瘍はCTで同定できず、腫瘍があったとしてもそれが非機能性であることもあるため、診断には副腎静脈サンプリング(AVS)が必要です。ただしAVSは侵襲性が高いため、副腎摘出を検討しない場合はAVSを行わず治療を行います。手術適応や患者さんの希望を確認してから検査適応を考える必要があります。副腎偶発腫はよく見かけるため、そちらからアプローチしてPAを診断することもあると思いますが、私はそれでPAとひっかかったことはあまりありません

午後の外来で高血圧の主訴で来た場合は、降圧が必要な数値である場合は降圧を優先します。Ca拮抗薬やα遮断薬を処方し、後日血液検査を行った後にARBなどを追加していくのが現実的かなと思います。

PA治療では、高アルドステロン血漿、低カリウム血漿、高血圧の改善を目標に行います。手術を行わない場合はMR拮抗薬をメインに行います。MR拮抗薬を調整しコントロール良好となれば、本態性高血圧患者と脳心血管病のリスクは同等となるとされているため、手術しないこともよくあります。MR拮抗薬には

  • スピロノラクトン
  • エプレレノン
  • エサキセレノン

があります。

スピロノラクトンは女性化乳房や月経不順の副作用があります。エプレレノンやエサキセレノンはカリウム製剤投与患者では禁忌となっており、薬剤選択は患者さんの背景をみて決める必要があります。私はアルドステロン症の薬物治療を行う機会は比較的多いですが、レニンの低値を改善するには以外と薬剤を増やしたり、増やしても低値が持続することが多いなぁ・・・と思いながら治療を行っています。

参考文献)

高血圧管理・治療ガイドライン2025.日本高血圧学会.

内分泌代謝科専門医研修ハンドブック.日本内分泌学会

高血圧

高血圧は家庭血圧で135/85mmHg以上の場合に診断します。家庭血圧115/75未満が正常血圧で高血圧と正常血圧の間は値によって正常高値血圧、高値血圧となります。収縮期血圧と拡張期血圧が異なる分類にまたがるときは、高い方の分類として判定します。正常血圧って結構ハードル高いなと思います。高血圧は心不全StageAあるいはBとしての側面も持ちます。米国では高血圧の基準は130/80mmHg以上としています。

高血圧は脳卒中や冠動脈疾患の最大のリスク因子です。120/80mmHg未満で全年齢で死亡リスクが低いとされており、この関連は拡張期血圧よりも収縮期血圧でより強いとされています。また、CKDや心不全、心房細動の発症のリスク因子でもあります。診察室血圧120/80mmHg以上では心血管疾患の発症率が増加します。私は運動をして標準体型であったときは120mmHgぐらいでしたが、今年の検診では140mmHgを超えていたので高血圧と診断されます。

高齢の場合は関連がはっきりしませんが、中年期の場合は認知症のリスクとなりうるとされています。血圧の文献を見るときは診察室血圧なのか家庭血圧なのかの測定条件に注意が必要です。家庭血圧でも測定に幅があるので、毎日なるべく同じ時間で図るのが理想です。毎日きちんと測定して血圧手帳をもってきてくださる患者さんがいますが、凄いなと思います。なかなか習慣付けるのは難しいです。

血圧には日内変動があります。血圧測定は朝と夜に推奨されておりますが、朝が高く夜が10-20%程度低くなるのが正常でdipperと言います。夜間血圧低下が20%以上下がる場合をextreme-dipper、0-10%未満がnon-dipperです。夜が上昇する場合はriserと言います。Dipper以外は脳心血管障害のリスクが上昇します。閉塞性睡眠時無呼吸症候群は二次性高血圧の代表疾患ですが、non-dipperやriserを示すことが多く、無呼吸後に血圧サージがみられ、睡眠時無呼吸症候群の高血圧はAHIより酸素飽和度低下指数(ODI)が関連しているとされています。ガイドラインを読んでいると知らないことが色々でています。睡眠時無呼吸症候群の治療中はAHIや使用率しか患者さんに説明していなかったのですが、ODIも今後説明するようにしようと思います。dipperの方もよく見かけますが、睡眠時無呼吸症候群のチェックもするようにしないといけませんね。

高血圧の有病率は女性では低下傾向ですが、男性ではあまり変わりないようです。ちなみに肥満の割合も男性が増加していますが、女性では増加していないようです。女性は凄いですね。

食塩摂取量が高くなると血圧は上がり、摂取量を減らすと血圧は低下します。私は普段はあまり塩分を意識することがないのですが、コンビニなどでお弁当を買うとその1食でかなり塩分摂取になってしまいますね。注意が必要なのは分かりますが、美味しいもの食べたいと考えると塩分はどうしても多くなってしまいます。。。

若年者ほど高血圧による疾患の障害リスクが高いため検診で指摘された場合は医療機関の受診が必要です。ガイドラインでは検診での血圧が140/90mmHg以上あるいは家庭血圧を5日間以上測定した平均値が135/85mmHg以上で医療機関の受診が勧められています。たまに検診で指摘され、自主的に自宅で測定し持ってきてくれる人もいます。その際はすぐ治療や検査に進めます。自宅での血圧がないと、家庭血圧を測定してまた来てもらうことになるので通院回数が増えてしまいます。

血圧高値の場合は減塩、カリウム摂取、適正体重にする、禁煙などを行い改善していく必要があるとされていますが、それがそもそも難しいから血圧高値を指摘されてしまうんですね。減量も言葉でいうのは簡単で時折やる気もでるのですが、続かないんですよね。

家庭血圧による高血圧診断や降圧薬判定には朝・晩の家庭血圧7日間の平均値で評価します。手首での血圧測定は動脈の圧迫が困難でることがあるため上腕で測定します。高齢者では何度説明しても前腕で測定してきてしまう人もいます。家庭血圧が測定できない場合は診察室血圧で診断や治療を行うしかないですが、診察毎に毎回血圧測定は時間の効率が落ちるのでできれば家庭血圧を測ってきてほしいと思ってしまいます。自動血圧測定器があれば良いのですが。。。

高血圧の患者さんをみるときは高血圧の原因と下記の臓器障害の評価が重要です。

脳;頭部MRI検査、認知機能テスト、抑うつ評価

眼;眼底造影検査

心臓;心電図、心臓超音波、BNP/NT-proBNP

腎臓;eGFR、尿定性検査での蛋白尿あるいは微量アルブミン尿(微量アルブミン尿は保険適応なし)

血管;頸動脈超音波、ABIなど

頸動脈超音波では内膜中膜複合体厚(IMT)やプラーク数、プラーク高を確認します。IMTは1.1mm以上で異常とします。

これらの検査を定期的に行い治療経過を見ていきますが、全て行うのは施設設備によって困難であるため可能な範囲で行う必要があります。

収縮期血圧が治療適応がないけど拡張期血圧が治療適応のあるような孤立性拡張期高血圧はエビデンスがないため積極的な降圧治療は推奨されておらず、収縮期血圧が治療必要な範囲に上昇するまで栄養療法などでの経過観察が望まれます。拡張期血圧が下がらない方は結構多いですが、無理に下げようとすると副作用が生じるため非薬物療法で経過をみるほかなさそうです。

生活習慣は高血圧の管理に重要で食事、体重、運動、飲酒、喫煙などが関連が強いとされています。飲酒に関するリスクは様々な意見があります。虚血性脳卒中に関しては少量の飲酒ではリスクが低いとされていますが、出血性脳卒中は飲酒量増加に伴いリスクは直線的に増加します。虚血性脳卒中も飲酒量の増加でリスクが増大するとの意見もあり一定の見解はありません。飲酒は適量であれば良いのかなと思ってましたが、やはり疾患によって違いますね。塩分は日本のガイドラインでは6g/日未満とされていますが、WHOは5g/日未満、米国心臓病学会は3.8g/日未満が目標としています。随時尿での尿Na/K比は食塩摂取量推定に用いるもので、2未満を目標としています。日本の基準でも難しいと思ってましたが、米国はもっと厳しいんですね。。。肥満の方が多く人種さもあり一概に比較はできないと思いますが。

高血圧治療の薬剤は背景の病態に合わせて調整します。基本的には単剤から開始しますが、高リスクの1度高血圧やⅡ度以上の高血圧では2剤併用で開始します。配合剤は保険適応の関係で初回からの導入はできません。私はCa拮抗薬とARBの組み合わせを使うことが多いです。それでもだめならARNIに切り替えるか少量のサイアザイド系利尿薬を開始しています。この組み合わせは患者さんの背景によって調整する必要があります。Ca拮抗薬は夜間頻尿の原因となることがあります。β遮断薬は糖・脂質代謝に悪影響を及ぼすとされており、積極適応をしっかり判断することが大切です。ロサルタン、イルベサルタン、エンレスト®には尿酸降下作用がありますが、サイアザイド系利尿薬やループ利尿薬、β遮断薬は尿酸上昇作用があるため尿酸に関しても気にしながら薬剤調整を行います。ACE阻害薬は副作用で咳をきたすことがありますが、ARBは気道過敏性を減少される可能性があるため喘息でも使いやすいです。喘息患者で高用量のステロイドやβ刺激薬が使用されている場合は低K血症に注意が必要です。ARBなどはK上昇作用があるため、Kの値も注意して経過を見る必要があります。β遮断薬は喘息に対しては慎重に経過を見る必要がありますが、心疾患がある患者のβ遮断薬はCOPD患者では安全で予後改善効果が報告されているため、COPDが背景にあっても心疾患優先でよさそうです。

慢性期脳梗塞は130/80mmHg未満、脳出血慢性期は130/80mmHg未満(できれば120/80mmHg未満)、心不全130/80mmHg未満、慢性腎臓病130/80mmHg、大動脈瘤130/80mmHg、糖尿病合併高血圧130.80mmHg未満とガイドラインに記載があるような疾患はほぼ全て130/80mmHg未満です。基本的には家庭血圧で薬剤調整をすることが多いため、さらに低い家庭血圧125/75mmHg以下でコントロールすることが重要です。ただしこれはあくまで外来に来れるような患者さんに対する数値です。収縮期血圧が10mmHg低下すると脳心血管病の発症リスクは20%低下すると報告されており、これは年齢に関わらずリスクは低下するとされていますが状況によって対応を変えることは大切だと思います。ADLが低下して訪問診療などを行っている場合は収縮期血圧150mmHg以下、終末期であれば収縮期血圧140-160mmHg以内を目安として薬剤の減量や中止を考慮します(背景疾患によってはそのまま治療継続が必要なこともあり個別での判断が大切)。終末期であれば患者さんが今まで内服していた薬なので本人の気持ちを考えて継続することもあります。生命予後改善効果がなくとも最後まで降圧治療を行うことが本人の救いとなることもあると思います。降圧薬でめまいやふらつき、頭重感などを訴える患者さんは比較的多いと感じます、降圧による脳循環不全の症状なのか、薬剤の副作用なのか判断は難しいです。血圧が140mmHgぐらいと降圧ができていないにも関わらずめまいを訴える患者さんもいますが、そういった場合は降圧薬を変更する必要があります。降圧薬を新規処方した場合や変更した場合、私は1か月後に血液検査で腎機能など副作用がないか確認しております。肝酵素が上昇してしまう患者さん、ARBで腎機能悪化する患者さんなどは時折います。ARBでの腎機能悪化は一時的なイニシャルドロップの可能性もあり、より慎重に経過を見るか腎動脈狭窄を精査するかになると思いますが、腎動脈狭窄は一般にクリニックだとなかなか検査が難しいです。

サイアザイド系利尿剤を含む異なるクラスの降圧薬を3剤使用してもコントロール不良の場合治療抵抗性高血圧と言います。服薬アドヒアランスや二次性高血圧、過度な飲酒や喫煙、運動不足、食生活などの生活習慣の問題などがあります。睡眠時無呼吸症候群と高血圧の合併はよく見かけますが、睡眠時無呼吸症候群もCPAP治療がなかなか難しい人がいます。マスクの圧やひもが気になったり、寝ているうちに外してしまうなどです。どうしてもCPAP治療が難しければ歯科に依頼してマウスピース治療の適応を評価してもらうことも選択肢の1つです。喫煙をずっとしてるため血圧が下がらない人も時折みます。二次性高血圧では原発性アルドステロン症を比較的よく見ます。他院で高血圧と低K血症をずっと内服のみで治療されている方を何度か目にしたことがあります。一度は二次性を疑って検査が必須です。

参考文献

高血圧管理・治療ガイドライン2025.日本高血圧学会.

骨粗鬆症

骨は破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成を繰り返す(骨リモデリング)臓器であり、カルシウムやリンの貯蔵庫としての役割があります。さらにその中の骨髄には造血機能もあります。カルシウムやリンは慢性腎臓病の際にも計測しますし、汎血球減少やLDH高値であれば骨髄疾患を疑うように骨は内科とも関連が深いです。深いんですが、そこまで意識して診察するのことに私はまだ慣れていません。

通常は骨吸収と骨形成は同量に生じるため骨量はリモデリングにより変化はしません。これを骨吸収と骨形成のカップリングと言いますが、このカップリングが崩れると骨粗鬆症に至ります。特に女性は閉経後に骨粗鬆症になりやすいですが、これはエストロゲンの欠乏により骨吸収が増大するためです。女性は閉経後に高血圧なども増加するとされているため、閉経期の診療は結構難しいなと感じて毎日診察しています。大腿骨頸部で診断された骨粗鬆症の推定有病者数は約1070万人とされています。約10人に1人って相当多いと思います。若年では疾患頻度は低いと思われるので、外来でみる患者さんの中に相当数いるのでしょうか。きっと私は見逃しているのでしょうが、骨折の病歴がなければ頭に浮かんですらきません。

原発性骨粗鬆症の診断は脆弱骨折の有無と骨密度によって診断します。

  • 椎体骨折か大腿骨近位部骨折。
  • その他の脆弱骨折(肋骨、骨盤、上腕骨近位部、頭骨遠位端、下腿骨)+骨密度がYAM値の80%未満。
  • 骨密度がYAM値の70%以下あるいは-2.5SD以下

上記のいずれかで診断します。つまり臨床症状がなくても検査だけで診断できる例もあるということです。症状がない場合は検診やその他の疾患関連で検査したときに診断されることになると思います。YAMとは健常若年成人の平均値のことで、腰椎や大腿骨などの複数部位で測定した場合は最小値を用います。

骨粗鬆症を診断した場合に続発性骨粗鬆症をきたす疾患の検索が必要です。原発性副甲状腺機能亢進症、甲状腺中毒症、性腺機能低下症、クッシング症候群などの内分泌疾患、吸収不良症候群や胃切除既往などの栄養に関する病態、ステロイドなどの薬剤、骨形成不全症やマルファン症候群などの先天性疾患、不動性、関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病、COPDなども検索が必要です。ACTH、コルチゾール、TSH、FT4、FSH、LH、遊離テストステロン、成長ホルモンなどの検査が必要です。血清カルシウムやリン濃度に異常がある際は副甲状腺ホルモンは必須の項目になります。血清リンは食後に細胞内に移動してしまうため、食後採血では低リン血症になっていることがあり解釈に注意が必要です。

ステロイドや糖尿病で生じる続発性骨粗鬆症は骨密度低下がみられない段階でも骨折リスクは増加しており骨質の問題とされています。HbA1cが7.5%以上で骨折リスクが高いという報告があります。糖尿病の臨床的骨折リスク因子が参考になります。

ビタミンD欠乏はくる病や骨軟化症にも関係してきます。血液検査で25(OH)Dを測定し20ng/mL未満はビタミンD欠乏、30ng/mL未満はビタミンD不足と判断します。この骨粗鬆症以外で易骨折性や骨密度低下を示す疾患があります。骨軟化症や多発性骨髄腫、線維性骨異形成症、強直性脊椎炎などです。骨粗鬆症を診断したときはCaやP、intactPTHなどは必ず確認すること、典型的ではない経過をたどる場合は再確認することが重要です。疼痛があり線維筋痛症と診断されているような症例でも、一度これらの疾患は確認しても良いと思います。

以前若年者の骨粗鬆症の既往がある患者さんを入院でみたことがあるのですが、その際は病院の転院を繰り返しており、どこかで情報が抜け落ちていき二次性なのか、精査したのかなどの情報がないことがありました。診療情報提供書は前医の分もつけて紹介した方が手っ取り早くて確実ですね。前医の紹介状もつけてくれる先生もいて、大変助かります。私は訪問診療をやるようになってから紹介状をより一層注意して記載するようになりました。その前は、おそらく抜け落ちた情報を紹介先に送っていたと思います。

骨粗鬆症の治療の目的は脆弱骨折の予防とそれに続く要介護状態を防ぐことです。治療適応は脆弱骨折の有無やYAM値、FRAX®などで決定します。治療評価は治療開始後の骨折発生の有無、骨量変化の推移、骨代謝マーカーの推移をみて総合的に判断することが重要です。これは治療によって骨量が増加しても骨折抑制効果との強い関連を指摘できなかったためです。椎体骨折には症状のある臨床骨折と症状のない形態骨折があるため、定期的に画像の評価も重要と考えます。X線は以前と比較すると分かりやすいですが、初めての1枚は私には結構自信がないです。CTであれば読影依頼で対応できますが、X線装置しかない施設での診療の場合は腕が試されます。なるべく設備が整った環境の方が安心ですね。また、大腿骨近位部骨折は48時間以内に手術を行った場合、合併症や術後1年の死亡率が低下するため診断したらすぐ整形外科への紹介が必要です。

骨吸収抑制薬の一覧骨形成促進薬の一覧をまとめています(使用には最新の添付文書の確認が必要です)。

骨代謝マーカーは病態評価や薬剤選択、治療効果判定に用いますが診断には利用しません。診断時と治療開始後6カ月以内の測定で保険適応があります。骨代謝マーカーには吸収マーカーと形成マーカーがあり、それぞれ1種類ずつ測定します。施設で慣れている項目で良いと思いますが、腎機能低下の影響を受けるマーカーもあるため注意が必要です。腎機能の影響を受けない組み合わせの例はTRACP-5b(吸収マーカー)、BAP(形成マーカー)です。治療によって骨吸収マーカーが最初に変化し、その3か月程度あとから骨形成マーカーが変化するため治療開始後から3-6カ月後に再度マーカーを測定して判断します。

この骨代謝マーカーは日内変動があり、朝に高く、夜に低下します。ただし上記のTRACP-5b、BAPは日内変動が少ないです。しかし正確な評価のために毎回測定時間は同じにして評価する必要があります。外来では予約の関係で同一時刻って結構難しいです。施設毎にプロトコルを決めて別に予約枠などあれば良いのですが、医療資源も限られており可能な範囲で行うことが重要だと思います。

治療不応の場合はカルシウム不足や25(OH)D不足を考慮します。効果判定に骨代謝マーカーの測定やDXA(デキサ)法による骨密度の変化量が役立ちます。DXA法での骨密度測定は、最小有意変化(LSC)を超える上昇があれば治療効果ありと考えます。LSCとは変動係数(CV)に一定の値をかけた数値です。LSCの数値は施設毎に確認が必要ですが、例えばLSCが5.3%の装置であれば前回値との比較で5.3%以上の変化があれば効果ありとします。

胃切除の既往がある場合は経口ビスホスホネート製剤ではなく静注製剤など別の投与経路を選択します。

治療経過中は活性型ビタミンD3製剤の使用で高Ca血症や高Ca尿症になるため長くとも3か月毎に評価し薬剤調整を行います。薬剤性の高Ca血症による意識障害は時折目にします。内服している患者さんは多いため頻度としては少ないのかも知れませんが、生じると重大なため普段から患者教育が大切ですね。ただ高齢者では脱水のリスクも高く、注意力も低下していると考えられるため内服の適応をしっかり考慮する必要があります。

ビスホスホネートは長期使用で非定型大腿骨骨折や顎骨壊死などの合併症の可能性があります。そのため、脆弱骨折などを来さなければ、経口では5年、静注では3年継続し休薬を考慮できます。その場合は2年程度で骨密度を測定し5%以上の低下があれば治療再開を検討できますが、日本人のデータではないため注意が必要とされています。アレンドロン酸を10年以上の継続した研究もあり、長期での治療も有用なことがあるため、必要に応じて治療延長も有用と考えられます。私は5年程度継続して脆弱骨折がなければ一旦休薬をしています。ビスホスホネートを入院で開始する際に、病棟まで歯科医が往診している施設もあるようです。私は歯関連は全て歯科医に丸投げしています。

参考文献

Yoshimura N,et al:J Bone Miner Metab.2009;27(5):620-628.

Cummings SR,et al:Am J Med.2002:112(4):281-289.

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会編.2015.
Oei L,et al:High bone mineral density and fracture risk in type2 diabetes as skerletal complications of in adequate glucose control.Diabetes Care 36:1619-1628,2013.

胃食道逆流症(GERD)

GERDは食道粘膜障害がある逆流性食道炎と症状のみの非びらん性逆流症(NERD)に分類されます。GERDの有病率は約10%程度です。凄まじい数だと思いますが、確かに胃薬飲んでいる人多いですね。

GERDによる慢性咳嗽や喉頭炎は酸以外の咽頭逆流が関与している可能性があるとされています。慢性咳嗽でPPIやPCABを処方しても改善がない理由はこれなんですかね。。PCABと消化管運動機能改善薬をセットでだしても良いかもしれませんね。喘息では好酸球が高い患者さんがいますが、治療抵抗性の場合は好酸球性食道炎も考えて良いかもしれません。

私は喘息とGERDをもっており、吸入薬と胃薬を飲んでなんとか過ごしています。吸入薬であまり効果がない時に胃薬飲むと、気持ちの問題はさておき1時間ぐらいで咳嗽や息苦しさが良くなることは確かにあります。

逆流性食道炎と比較してNERDは女性に多く低体重の人に多いとされています。

非心臓性胸痛の原因となるため狭心症を疑う症状ではGERDも鑑別に挙げる必要があります。

GERD診断のためのPPIテストは、PPIを倍量で処方し効果を確認します。日本では倍量は保険適応がありませんが、PCABが使用できるのでPCABで良いと思います(NERDへの有効性は不明です)。

PCABで改善しない場合はモサプリドや六君子湯、半夏瀉心湯、アコチアミド、バクロフェンとの併用が選択肢としてありますが、保険適応には注意が必要です。

参考文献

胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2021.日本消化器病学会.

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血は、文字通り体内の鉄が不足することによって生じる貧血です。患者数はかなり多いです。何かの理由で血液検査をとり、貧血があり確認すると「昔から言われているけど特に治療をしていない」という患者さんが多いです。

鉄欠乏性貧血の症状は動悸、息切れ、疲れやすさ、異食症、下肢の不快感(むずむず脚症候群)、不眠がなどが生じます。また、組織の鉄欠乏による症状として脱毛や鉄の変形、舌のしみり感、喉頭違和感、嚥下困難があります。乳幼児期では発育発達障害がみられることもあるようです。喉頭違和感を訴える患者さんは外来で非常に多く見かけます。私の場合は喘息に対して吸入薬を処方し、それが原因であることが多いのですが、吸入薬を変えても改善せず、やめても改善しないため耳鼻科を受診してもらいますが、やはり何もないということが今まで結構多かったです。そういった患者さんには鉄をチェックした方が良いのかーと書きながら考えています。

鉄欠乏の原因は主に性器や消化管からの出血、妊娠、筋肉量の増加、鉄の摂取不足、ピロリ菌感染、PPIの長期内服、慢性炎症などがあります。若い女性に多い疾患で、どこまで精査するかは判断に迷うことが多いです。婦人科を受診してくださいとお願いしても受診しないことが多いので、私は自身で腹部CTをとることもよくあります(外勤先では腹部MRIを撮影します)。以外と子宮筋腫などの疾患が見つかることが多いです。ベストは婦人科を受診しエコーでの検査が良いのかもしれませんが、現実はあまりうまくいきません。

診断は貧血があり、TIBCが360μg/dL以上、血清フェリチン12ng/mL未満を満たす場合です。貧血がないけどフェリチン12ng/mL未満は潜在性鉄欠乏であり、鉄欠乏性貧血に進行します。この鉄欠乏の状態でも症状をきたすことはあるため、良くわからない症状の人はフェリチンを調べることを良くするのですが、その場合は低下していないことが多く、低下していて治療しても症状の改善を認めないこともあります。非特異的な症状の診察はやはり難しいです、

心疾患や腎疾患がある場合はフェリチンは高めにでることがあるとされています。そのため、CKDではフェリチン50ng/mL未満は鉄補充したほうが良く、50-100gn/mLの場合はTSATが20%あるか確認し、なければやはり鉄補充した方が良いとされています。CKDの人はエリスロポエチンの低下ばかりに目を向けず鉄とセットに考えることが重要です。
心不全の貧血はこちら

治療は基本的には経口鉄剤です。経口鉄剤を使用しない状況があり、潰瘍性大腸炎やクローン病(鉄剤が腸管に悪影響)、ウイルス性肝炎・肝硬変(過剰鉄が幹細胞障害をきたす)がその例です。

私は以前からフェロミア®50mgで開始し悪心や便秘、下痢などの副作用で継続できない場合はインクレミン®シロップを2ml/日で開始し10ml/日ぐらいまで時間をかけて増量する治療を行っておりましたが、最近はリオナ®を用いることも増えました。

たまにですが鉄剤で蕁麻疹をきたす人がいます。そういった人にインクレミンを開始して経過をみたことがあるのですが、最初は問題ないのですがしばらくすると蕁麻疹が出現して中止となりました。1-2mL/日でも継続は難しかったです。そういった患者さんには栄養指導などの食生活の改善でみるしかないのかなと思います。

内服しているにも関わらず改善しない場合は内服薬の飲み合わせや貧血の原因を再検索する必要があります(ピロリ菌も経口鉄剤不応性の原因となります)。

鉄欠乏性貧血はかなりありふれた疾患で日常的に目にします。なるべく情報をアップデートして、うまく治療を行っていきたいです。

参考文献

World Health Organization.WHO guideline on use of ferritin concentrations to assess iron status in individuals and populations.2020.

鉄欠乏性貧血の診療指針.日本鉄バイオサイエンス学会.