非結核性抗酸菌症(NTM)

NTMは結核菌とらい菌以外(M.ulcerans complexも除くことがある)の抗酸菌のことです。土壌や水系の環境に常在します。ヒト-ヒト感染は特定の極めて稀な状況でなければ起こしません。リンパ節など様々な臓器で発症することもありますが、ほとんどが肺での発症です。

肺NTM症ではほとんどがMAC症、M.kansasii、M.abscessus complex(MABC)です。M.chimaeraを含めた3種類をMACとすることがあります。

abscessusには3つの亜型abscessus、massiliense、bolletiiがあります。abscessusとbolletiiはクラリスロマイシン耐性があり、massilienseはクラリスロマイシンに反応良好です。

画像所見で線維空洞型(FC型)と結節・気管支拡張型(NB型)に分類されます。
・FC型は肺の構造を壊すような既存の肺疾患がある中高年男性に多く予後不良です。
・NB型は中高年のやせ形女性に多いです。
NB型でも進行に伴い空洞ができるcavitary NB型の場合は治療抵抗性です。空洞には多量の菌が含まれており、空洞影を見たら排菌量が多い可能性があります。

肺NTM症の診断基準は胸部CTでNTMを疑う陰影がある+喀痰で培養が2回以上陽性(気管支鏡を用いて採取した気管支洗浄液なら1回陽性)で診断します。肺MAC症の初回診断(再燃例は除く)時に限り、胸部CTの所見+喀痰培養1回+抗MAC抗体陽性の診断基準が使用できます。臨床症状は無くても診断ができ、喀痰の培養はできれば1週間以上の間隔をあけて採取した喀痰が望ましいです。

細菌学的な検査では、喀痰や気管支洗浄液を用いて、塗抹検査→培養検査→同定検査→薬剤感受性検査の順に行います。塗抹検査が陽性であればその検体を用いて結核菌の核酸増幅検査を行い結核の可能性を下げることが大切です。塗抹検査は以前は直接塗抹法が利用されていましたが、現在は集菌塗抹法を利用することが多いです。塗抹陽性のみでは生菌か死菌か分からないため、培養検査を行います。培養ができたら、菌種同定検査を行います。その後に薬剤感受性検査です。NTMは迅速発育菌と遅発育菌に分けられ、菌種によって薬剤感受性検査のキットを使い分ける必要があります、迅速発育菌にはブロスミックRGM、遅発育菌にはブロスミックNTMを使用します。MAC症とabscessus complexはマクロライドとAMKの感受性を、kansasiiにはRFPの感受性を確認し治療薬を決定します。

MAC症の死亡を予測するスコアにMAC prognostic scoreがあります(Takeda K,et al.;Sci Rep.2025:15:28539.)。
1;年齢が65歳以上 1点
2;男性 1点
3;間質性肺炎がある 1点
4;空洞性病変がある 1点
5;血清アルブミンが3.5g;dL未満 2点
上記のスコアで
低リスク(0-2点)は死亡率は極めて低く、保存的経過観察が選択肢
中リスク(3-4点)は慎重なフォローと治療適応の見極め
高リスク(5点以上)死亡リスクが高く積極的治療介入

6分間歩行距離も疾患進行や死亡と関連するため定期的な把握が望ましいです。
生物学的製剤による治療やストレス、栄養不良がMAC症の悪化因子となりうるため診察するたびに注意が必要です。

治療は複数の抗生剤などを用いた化学療法です。
NTM症の治療目標をどこに置くかは常に考える必要があります。若年であれば死亡予測や増悪リスクが無くとも長期的な視点でみると予後に影響するため治癒を目標に積極的に介入を検討します。
少量のエリスロマイシン(EM)治療は進行抑制を狙って投与することがありますが、あくまで改善を狙うものではありません。高齢者で積極的な治療が困難な場合によく用います。

治療開始の目安は難しく明確な基準はありません。
NTMの診断が確定しており、喀痰抗酸菌塗抹陽性や空洞を有するような菌量が多い場合は治療が推奨されます。それ以外の場合はNTMの菌種や患者のADL、基礎疾患や免疫抑制の状態、画像所見が悪化してきているなどあれば治療を開始します。個人の意思にゆだねられる部分が多く、治療開始はいつも迷います。画像が急速に進行してきていれば迷わず治療を行いますが、緩徐に悪化している場合は増悪因子を考慮しながら考えます。増悪因子は様々な報告があります。高齢、基礎疾患(糖尿病など)、免疫抑制状態、低BMI、予測FVC低値、空洞例、肺菌量が多いなどです。緩徐に画像が悪化+上記の増悪因子がある場合は治療を考慮しますが、増悪因子がなくとも患者と相談し治療をすることもあります。
緑膿菌やアスペルギルス症が合併することもあり、NTMの治療中は常に念頭に置く必要があります。空洞がありその周囲に浸潤影や空洞壁肥厚、空洞の拡大、菌球、液面形成があればアスペルギルスを考慮しますが、空洞を有さずにアスペルギルスを合併する場合は浸潤影を呈します。アスペルギルスの合併の診断は非常に難しいです。

積極的な治療を行う場合、
①初回治療や空洞のないNB型
②初回治療でFC型あるいは重症、空洞を有するNB型
③難治例(多剤併用療法6カ月で培養陽性)
の3つに分けて考えます。
①の場合はA法(連日)とB法(週3日投与)に分かれます。
・A法;CAM800mg/日またはAZM250mg/日+EB10-15mg/kg/日(750mgまで)+RFP10mg/kg/日(600mgまで)
・B法;CAM1000mgTIWまたはAZM500mgTIW+EB20-25mg/kg(1050mgまで)TIW+RFP600mgTIW
です。
用量と日数が異なりますが薬剤はCAM(またはAZM)+EB+RFPです。
②の場合は①に追加でSMやAMKなどのアミノグリコシドを追加します。
③の場合はALISも考慮します。
②や③の場合は専門施設への紹介が無難だと思います。

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