アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎はくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉が症状で1型アレルギーによって生じる疾患で通年性と季節性に分類されます。通年性は室内塵ダニアレルギー、季節性は花粉症が多いとされています。吸入アレルゲンを調べるとスギとダニ陽性の人は結構います。ただもともと花粉症を指摘されている人は多く、初診の患者さん全員に検査をすることはないです。アレルゲン検査で陰性でも花粉の時期になると症状が出る人はいるため、その際は症状を優先して対応します。

アレルギー反応を起こす花粉が複数あると通年性の症状となることもあります。これはプライミング効果が関与しており、プライミング効果とは一度発症すると抗原暴露による症状の発症閾値が低下するため、花粉の時期が過ぎても少量の花粉で症状がでてしまうことです。外来のでは鼻漏が1年中ある人もいて、花粉の時期じゃないのに鼻漏がでるという人がいます。そういった方には通年性のアレルゲンに反応がないか血液検査で調べても良いと思いますが、あまり希望される患者さんは少ない気がします。アレルゲンの検査は費用も高いので、気軽にはあまりできないです。検査キットによりますが、3割負担で4500円ぐらいします。1回の支出が5000円程度になるとお財布には少し痛いです。私はあまりお金を使うタイプではないので、4500円だったら自分はやらないでいいやと思ってしまいます。薬剤で改善がない場合に患者さんと相談していくのが良いと思います。もちろん全て調べたいと言う患者さんもいますので、そういった時は検査をすぐ行います。

皮膚テストや血清特異的IgE検査が陰性でも鼻粘膜局所でIgEが産生され局所反応を起こすlocal allergic rhinitis(LAR)という疾患概念もあるようです。これは私はあまり知りませんでしたが、血液検査で特異的IgEが陰性でも花粉の時期に症状が出る人がいます。血液検査で多抗原を一度に調べられるものは判定量法であり定量法と比較して検査の精度が劣るため、あるいはアレルゲンコンポーネントを調べているわけではないためかなと思っていましたが、このLARであるという可能性はあるのかなと思って診療しています。この診断は誘発テストなどが必要なため、耳鼻科に任せるしかなさそうです。

アレルギー性鼻炎はくしゃみや鼻漏が多いとくしゃみ・鼻漏型、鼻閉が強いと鼻閉型として治療薬を検討します。アレルギー性鼻炎の重症度はくしゃみは1日の回数、鼻漏は鼻をかむ回数、鼻閉は口呼吸の時間の長さで判断します。くしゃみの回数、鼻をかむ回数、口呼吸の長さ、、、これを覚えている人はいるのでしょうか。。。ざっくりと症状が辛ければ重症に準じて治療を行い症状が改善したら薬剤を減らしていく方が患者さんには良いかもしれません。ただ毎年症状が出ている人が多いため、すでにこの薬を毎年使っていますという患者さんも結構いるためその薬を処方することも多いです。効果が乏しくなれば別の抗ヒスタミン薬に切り替えたりします。

アレルギー性鼻炎は1998年から20年間で有病率が約30%→50%と増加している(松原篤ほか.日耳鼻.2020;123;485-490)とされています。私は鼻炎持ちではないですが、鼻炎の妻を見ていると本当に辛そうです。この辛い病期の有病率が50%とは、恐ろしいです。

Allergic rhinitis and its impact on asthmaではアレルギー性鼻炎には経口抗ヒスタミン薬より点鼻ステロイド薬を推奨しているようです。点鼻ステロイドは使用に少し抵抗があるかもしれませんが、点鼻血管収縮薬と違い使用にためらう必要はなさそうです。

アレルギー性鼻炎の治療は抗原回避、薬物、アレルゲン免疫療法、手術がありますが、抗原回避と薬物療法は一般のクリニックでも行えます。私の勤務先ではすでに手一杯であるためアレルゲン免疫療法はできませんが、行える医療機関が近くにあり適応があれば積極的にやった方が良いのかなと思います。

抗原回避は花粉は結構難しいと思います。花粉の多い日には外出を控える(仕事をしている人にはほぼ無理でしょう)、マスク、眼鏡をするなどが良いようです。殺ダニ剤はダニが死んでもアレルゲン活性が残存することや吸入すると人体への影響もあることからダニ抗原回避目的では推奨されていません。こういった煙タイプの防虫剤を行った後に家中の窓を開けて空気の換気をする瞬間が好きですが、私だけでしょうか。ダニが発生しないように部屋の湿度は60%以下が良いようです。60%ってすでに結構高いと思いましたが体感はどの程度なのでしょうか。部屋の湿度が60%になったときにこの記事のことを思い出してみようと思います。

第2世代抗ヒスタミン薬は連用により改善率が上がります。そのため頓用で使用するよりは症状に限らず毎日服用がよさそうです。ただ患者さんによっては症状が出た時だけ使用している人もいるため、そういった人には今まで通りの使い方で継続したりもします。レボセチリジン、ルパタジンは増量が可能とされています。抗ヒスタミン薬を使用するときは自動車運転に注意するよう説明が必要で説明してテンプレート化された文章をカルテに記載しておくことが大切です。フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、ビラスチン、ルパタジンはエリスロマイシンとの併用で血中濃度が上昇します。私は喘息でエリスロマイシンを使用することが結構あるため、注意しています。

Th2サイトカイン阻害薬(スプラタスト)はくしゃみや鼻漏より鼻閉に効果があるようです。私はあまり処方していない(単に使い慣れていないため)のですが、今後鼻閉型の人がいたら積極的に使用してみようと思います。

点鼻ステロイド薬は吸収されにくいため、1年以上の使用でも全身の副作用は少なく(ベクロメタゾンは除く)、長期連用により改善率は上がり、炎症の初期からの使用で症状が抑制できるため早期から開始するができます。私は点鼻ステロイド薬は連用で耐性ができると勘違いしていました。小さいころに誰かに聞いた記憶があるのですが、間違っていたようです。今では気軽に処方しています。

プランルカストは白血球減少、間質性肺炎、好酸球性肺炎などの重大な副作用に注意です。モンテルカストは血管浮腫や中毒性表皮壊死症に注意。いずれも重大だが頻度は少ないです。モンテルカストは精神症状の注意も必要でありますが、プランルカストは1日2回内服が必要なのでどちらを使うかは現時点では好みで良いのかなと思います。

全身性のステロイド薬はセレスタミン®(抗ヒスタミン薬とベタメタゾンの合剤)やメドロール®が用いられることが多いです。点鼻と経口でステロイド薬の効果は同等とされているため、できれば点鼻が良いと思いますが、もちろん点鼻薬でもダメな人はいます。そういった方には内服ステロイドを処方することがありますが、効果がなければ中止し耳鼻科に依頼をした方が良いと思います。ただそういった方は耳鼻科でも結局改善せずドクターショッピングを繰り返したりします。保険適応外であることを説明し抗ヒスタミン薬の倍量を投与したりしますが、それでダメなら私はお手上げです。

オマリズマズを使用するときは抗ヒスタミン薬は併用が必要です。喘息や好酸球性副鼻腔炎で生物学的製剤を使用することがありますが、アレルギー性鼻炎に対しての生物学的製剤の使用経験は私にはないためイメージがあまりつきません。

点鼻用血管収縮薬は連用で効果減弱、鼻粘膜の腫脹(薬物性鼻炎)をきたすため使用は10日程度までに収める必要があります。これはを使う必要があるときは耳鼻科行ってくださいと言います。

舌下免疫療法にはダニとスギがあり、使用する薬剤毎にe-ラーニングが必要です。口腔内の副作用は通常数週間で自然軽快するとされています。ダニとスギを併用する場合は開始を4週間空けるようです。5歳未満では安全性が不明とされているので使用しない方が無難と思います。私も使用しようとしてe-ラーニングを受講しましたが、結局そこまで手が回らないため使用していないです。

薬物性鼻炎の原因として気管支拡張薬やNSAIDs、ピル、点鼻用血管収縮薬があります。呼吸器疾患で気管支拡張薬を使用することが多いため、注意が必要と思いました。ガイドラインを読むまで知らなかったです。

熱い食事で鼻症状がでる鼻炎は味覚性鼻炎。高齢者では鼻粘膜の萎縮によって老人性鼻炎となるようです。高齢者でずっと鼻漏があり、いろいろ薬を使用しても改善しない人がいますが、これなのかもしれないです。老人性鼻炎は鼻閉やくしゃみがなく改善が難しいようですが、体をあっためたり、当帰芍薬湯が良いかもしれないようです(市村恵一.JOHNS 2012 ; 28: 1352―1356)。

アレルギー性鼻炎は鼻の掻痒を伴うことがあるが急性鼻副鼻腔炎や慢性非好酸球性鼻副鼻腔炎ではくしゃみはでないようです。急性鼻副鼻腔炎でもくしゃみしている人がいるような気がしますが、教科書的にはでないようです。別の病態を合併しているからなのでしょうか。。

★通年性アレルギー性鼻炎の治療例

①症状が軽い

ビラノア®、スプラタスト®、リザベン®、ナゾネックス®のいずれかを使用

②中等症でくしゃみと鼻漏がメイン

ビラノア®+ナゾネックス®

③中等症で鼻閉メイン

モンテルカスト+ナゾネックス®

★花粉症

①症状が出る前

ビラノア®またはナゾネックス®

②軽症

ビラノア®またはナゾネックス®

③中等症

ビラノア®+ナゾネックス®±モンテルカスト

④重症

ナゾネックス®+ディレグラ®±ステロイド経口1週間

アレルギー性結結膜炎で点眼ステロイド使用する際は眼科へ眼圧測定依頼。

漢方の大青竜湯や小青竜湯も使える。

参考文献
鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版

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