肥満症はBMIが25以上で健康障害や内臓脂肪の蓄積がある状態です。BMIが35以上であれば高度肥満症と言います。
WHOの診断基準ではBMI30以上を肥満としていますが、日本では25以上を肥満としています。つまり私は日本では肥満ですが海外では肥満ではないということになります。。なりません。。。
この肥満症と肥満は明確に区別されており、肥満はBMI25以上である状態であり、それに健康障害を合併あるいは合併しそうな状態を肥満症という疾患としています。お相撲さんは肥満だけど健康障害がなければ肥満症ではないということです。
似たような概念にメタボリックシンドロームがあります。こちらはBMIではなくウエスト周囲長で内臓脂肪面積を推定し、脂質異常症、血圧高値、高血糖があるかどうかで診断します。BMI25未満でも内臓脂肪蓄積例が多いとされており、肥満症の診断基準ではとらえきれない例をスクリーニングできます。特に高齢者では身長短縮や骨格筋減少などが理由でBMIが正常でも内臓脂肪の蓄積があるサルコペニア肥満が存在するため注意が必要です。
肥満は原発性肥満と二次性肥満があります。二次性肥満の場合は原疾患の治療が優先されます。内分泌疾患、遺伝性、視床下部疾患、薬剤性が主に考慮されますが、疾患頻度が不明ですが、内分泌疾患と薬剤が多いのかなと勝手に考えています。最低限ここは調べた方が良いと思います。肥満を来す薬剤は結構多く、ステロイドや抗うつ薬、非定型抗精神病薬などは知っていましたが、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリンやミロガバリン)も原因となるようです。これは知りませんでした。
蛋白質接種割合が少ないことや早食い、低カロリー甘味料などは肥満のリスクとなります。それ以外もリスク因子は多くあるので1つ1つ確認するのは臨床では難しいと思います。施設毎に質問票を作るなどして外来時間がかからないように工夫が必要かなと思います。低カロリーと書いてある商品を見るとついつい買いたくなりますが、一旦立ち止まってよく考える必要がありそうです。
BMIが高いことは高血圧や高TG血症、低HDL血症、糖尿病、一部の癌のリスクとなります。肥満の場合はBNPは低値を示すため、心不全評価には注意が必要です。脂肪組織でBNPの分解促進と産生低下があるためです。BNP低値でも肥満があれば心不全を疑って超音波を行うことを考えた方が良いかもしれません。
高齢者や特定の状況(冠動脈疾患の二次予防、末期腎不全など)ではBMI高値の方が死亡リスクが減少するというobesity paradoxということが起こり得ます。ただし、BMI高値のみではなく内臓脂肪量に目を向けると、高齢者でも内臓脂肪が多いと死亡リスクが上昇するとされております。状況によって減量するかどうか注意しながら決定するしかないと思います。高齢者ではやせ型の人の方が色々な疾患で予後が悪い印象が強く、特にサルコペニア肥満の人に減量を勧めるのはどうしても抵抗があります。減量を勧めるのは怖いので食事制限ではなく運動を勧めて筋力を落とさないようにすることが大切だと思います。介護保険の申請を行いデイサービスなどの利用も有効だと思います。
体重が重いと足が痛くなるというのはイメージがしやすいと思いますが、中年期の肥満は高齢期のフレイルのリスクとなる可能性があります。体重いと動きたくない気持ちはすごくわかります。
シフトワーカーは内臓脂肪型肥満になりやすいとされています。確かに、高血圧などの生活習慣病があり肥満の患者さんで、シフト制だから夜の食事が不規則などの訴えを聞くことが多い気がします。夜の仕事は大変な気持ちはすごく分かります。
体脂肪の評価方法は色々ありますが、簡便であるためBMIが一番評価しやすいと思います。あとはCTで内臓脂肪面積を測定できますが、CT検査装置に測定のプログラムがあるかどうか放射線技師に確認すればいいと思います。あるようなら臍レベルの断面で測定できるので、技師さん確認すると教えてくれると思います。
小児の場合は身長が成長していくため成人で使用するBMIではなく標準体重と実測体重で求める肥満度を用いて行います。成長曲線を考えながら行うため慎重に行う必要がありそうです。私はやったことありません。
精神疾患がある場合は食事療法の順守が難しいこともあると考えられます。薬剤を使用する際は慎重に行う必要があります。肥満外科手術の場合も、術前に精神疾患のコントロールを行ったうえで手術するよう注意が必要です。精神疾患の患者さんで肥満の患者さんは多い印象があります。肥満と精神疾患の関連は言われていますが、薬物治療を行うときは単独で治療する勇気は私にはないです。精神科の先生に紹介状で許可をいただき、連携を行いながら治療をします。
肥満症の治療の目的は健康障害の予防と改善です。体重を3%落とすだけで血圧や脂質、血糖、肝酵素などの改善を認められるため、まずは3%を目標として経過をみます。3%は楽と思っていましたが、肥満な私にとっても大変です。よく痩せている人は、太っている人の数Kgの減量は簡単と思っておりますが、難しいんです。リバウンドするんです。。。
肥満症の薬物治療は保険適応に注意が必要ですが、GLP-1受容体作動薬やマジンドールSGLT2阻害薬などがあります。美容目的で自由診療で使用されており賛否両論がありますが、肥満症であれば使用した方が良いのかなと思います。痩せている人がさらに痩せる目的で使用されていることが問題であり、肥満症に関しては保険適応の拡大や実施可能施設の要件緩和などして欲しいなと日々思っています。
減量が急速に行われたときは胆石が発生する可能性があるためスタチンや低エネルギー高脂肪食(ウルソデオキシコール酸併用)での予防が有効な可能性があります。私は以前ダイエットで1カ月で6.7Kgぐらい落ちたことがあるのですが、胆石があるかどうか日々悶々としています。
参考文献
肥満症診療ガイドライン2022.日本肥満学会.ライフサイエンス社.
