肺炎

肺炎は肺実質の急性の感染性の炎症とされています。
原因菌の観点から細菌性と非定型肺炎に大別され、発症した場所の観点からは市中肺炎(CAP)、院内肺炎(HAP)、医療・介護関連肺炎(NHCAP)に大別されます。
また、画像の観点からは大葉性肺炎と気管支肺炎に分類されます。このように様々な視点からの分類がありそれぞれ一個ずつ確認していくことが大切ですが、実際は細菌性肺炎か非定型肺炎か考えるのが一番大切かなと思います。画像の分類の大葉性肺炎は肺炎球菌、クレブシエラ、レジオネラで見られ、炎症によって滲出物が肺胞に貯留しKohn孔を通って拡大するため、気管支が支配している区域とは関係なく非区域性に拡大していきます。気管支肺炎はその気管支が支配している区域に沿って広がります。ただ気管支肺炎の画像所見を示していても肺炎球菌であることもありますし、起因菌の検査はあくまで抗原検査などで行うため学術的には大事なのでしょうがあまり臨床では役にたたない気がします(ただ検査キットがないなど抗原検査ができない状況であれば役に立つと思います)。


細菌性肺炎と非定型肺炎(マイコプラズマ)の鑑別は①60歳未満、②基礎疾患がないか軽い、③頑固な咳、④胸部聴診所見が乏しい、⑤迅速検査陰性、⑥WBC 10000/μL未満、の項目の合致数で行いますが、これは4項目合致しても鑑別は難しく、マイコプラズマと細菌が合併することもあるためあくまで参考程度です。レジオネラの推定にはこの基準は使えません。外来では判断が難しく、細菌性、非定型療法をカバーする抗生剤をだすこともかなり多いです。

CAPは肺炎球菌やインフルエンザ菌、マイコプラズマが多く、慢性肺疾患がある人はモラキセラも考慮が必要とされています。ウイルスはエンテロウイルス、ライノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、RSウイルスなどがみられます。口腔内連鎖球菌やプレボテラ賊、フゾバクテリウム属などの嫌気性菌も多い(Nemoto K,et al.J Infect Chemother 2022:28:1402-1409)とされており、なんでもありです。これらの原因のなかで検査キットがある抗原検査をすべて行うことは非現実的で、一般外来では喀痰培養の結果を待っている間にほとんどが治癒してしまいます。もし改善なかったときのことを考えると喀痰培養はやっても良いのかも知れませんが、良好な喀痰の採取は難しく、口腔内の常在菌が検出されるだけで終わることも多く、どこまでやるかは悩ましいと思います。私は抗酸菌などを疑わない限り喀痰培養はほぼ提出していません。

肺炎で血痰がでることがありますが、肺炎では肺胞毛細血管漏出のため赤血球が肺胞に入り込むためです。肺炎で血痰が出る人は結構いますが、この機序はイメージしやすく納得です。

マイコプラズマ肺炎は免疫反応による細胞障害であり細胞性免疫の過剰反応が気管支血管周囲に炎症細胞の浸潤をもたらし、内腔が狭窄するため閉塞性気管支炎をきたすとされています。

治療の抗生剤は一般的なCAPでは最短5日かつ解熱後3日までが1つの目安ですが起因菌や肺化膿症などの合併症の状態により、より長期になることもある。細菌性肺炎にはアモキシシリン/クラブラン酸やキノロン系を、非定型肺炎にはマクロライド系やミノサイクリン、キノロン系を用います。1日1回の点滴投与が必要な状況ではセフトリアキソン、ラスクフロキサシン、レボフロキサシン、アジスロマイシンが使用できます。外来でみる場合にセフトリアキソンを院内で1日のみ投与し、自宅でオーグメンチンとサワシリンを内服してもらうこともあります。在宅の場では1日1回の点滴が限度である場合が多いため、これらは重宝します。トスフロキサシンは結核に効果がないことも大切です。

重症な肺炎ではサイトカインストーム(過剰な炎症)で肺胞上皮や肺毛細血管内皮が障害されてARDSをきたすことがあります。重症な場合は広域抗生剤にマクロライド系やステロイドを併用することがあります。アレルギーや併用禁忌薬がなければアジスロマイシンの点滴は気軽に投与していいのかなと思います。耐性菌うんぬんを言う事も大事ですが、重症な場合はまず救命をが優先で良いと思います。

NHCAPは①長期療養型や介護施設入所しているか、②過去90日以内に病院を退院していないか、③PS3程度で介護を必要としていないか、④通院して血管内治療を受けていないかをみて判断します。NHCAPは肺炎球菌や肺炎桿菌、MRSAが多いが、外来で治療できそうであればCAPと同様の抗生剤で良いとされています。このMRSAは保菌のみで肺炎とは関係ないことが多く注意が必要です。検出されても定着しているだけということが多く、MRSAをカバーしていない抗生剤で改善することが多い印象です。

肺炎球菌とレジオネラの尿中抗原は数か月以上陽性が続くため肺炎を繰り返している場合は、2回目以降は以前の肺炎球菌の陽性反応が残っているだけということがある。
肺炎球菌の検査は尿中抗原と喀痰抗原があり、成人のCAPで肺炎球菌に対する検出感度は尿中抗原が62%、喀痰抗原が89%である(福島喜代康,他.日呼吸会誌.2013.2:343-348.)が、喀痰抗原の場合は口腔内の肺炎球菌を検出しているだけという擬陽性に注意。

成人肺炎の起因菌検出のための抗原検査は肺炎球菌、レジオネラ、インフルエンザ、マイコプラズマ、SARs-CoV-2を主に考慮する。RSウイルスは乳児では行うが、RSは成人でも話題になることが増えてきており今後はどうなるか不明。マイコプラズマ、レジオネラ、インフルエンザ、SARs-CoV-2はPCRなどの遺伝子検査もできる。

肺炎クラミジアはIgM,IgG,IgAの抗体価で診断するが、発症時期によって参考になる結果が異なるため注意。

ウイルス性肺炎はウイルスそのものによる肺炎と、細菌との合併肺炎、ウイルス感染後の細菌性肺炎がある。CAPではウイルスが検出された頻度は16.4%(Saito A,et al.J Infect Chemother.2006;12:63-69)でSARs-CoV-2が加わるとさらに増加しそう。CAP患者の30-45%でウイルスが検出された(Shoar S.Respiralogy.2023:28:82-83)。ウイルスだから季節によって変動はする、迅速検査キットはインフルエンザ、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、アデノ、SARs-CoV-2がある。サイトメガロウイルスは血液検査でC7-HARPや気管支肺胞洗浄液(気管支鏡で採取)で抗原陽性細胞の確認、組織診や細胞診で核内封入体の検出などで診断する。

誤嚥性肺炎は誤嚥リスクがある人の肺炎で原因は嚥下機能低下と胃食道機能不全に大別されますが、誤嚥性肺炎の診断基準はありません。50代でも20%程度は誤嚥性であると言われており、高齢者のみではないことにも注意が必要です。誤嚥はむせこみがみられる顕性誤嚥と、みられない不顕性誤嚥があり、誤嚥する量が少ない誤嚥をマイクロアスピレーションと言い、これによって肺炎が生じることが多いとされています。高齢者の誤嚥性肺炎は老衰の経過ととらえることが多く、どこまで治療するかは相談が必要です。外来に通院できるADLの人は治療が必要ですが、高齢で認知症がありしゃべれない、歩けない、食べれない人にどこまで治療するかは家族との相談が必須です。私は以前勤務していた田舎の病院で、寝たきりで意思疎通できない超高齢者を数多く見ていました。家族からの強い要望で全ての救命処置を行い、できる限りの治療を全て行うようなことをしていました。やりがいはなく、家族からの強い要望をどこまで聞かなければいけないのかと思っていましたが、環境を変えることによって現在はそういった患者の対応は少なくなったため勉強のやる気も十分でるようになりました。田舎の医療はほんとに大変でした。

嚥下機能の確実な評価方法には嚥下造影検査と嚥下内視鏡検査があります。ベッドサイドでできる簡易的なものは反復唾液嚥下テスト(RSST)と改訂水飲みテスト(MWST)、簡易嚥下誘発試験があります。RSSTは中指で甲状軟骨を、人差し指で舌骨を触れておき、唾液を飲み込んだときに舌骨が人差し指を超えるかをみるものです。30秒で3回できればおそらく大丈夫です。MWSTは水5mlを舌の下にシリンジなど(コップでも可)を用いて注いで嚥下してもらい、むせないか、呼吸状態が悪化しないか(パルスオキシメーターをつけておく)をみます。誤嚥性肺炎の患者さんが入院になるときはRSSTを救急外来で行ってから病棟へ上げてました。MWSTはコップなど必要であり、私は急性期病棟では利用していませんでしたが、介護施設へ入所する利用者さんの対応をするときは行っておりました。

高齢者の肺炎を診る際は、「この患者がこの先1年以内に死亡するとしたら驚くか」というSurprise Questionを考えて急変時の対応を決めていくことが大切(非がん性呼吸器疾患緩和ケア指針2021)とされています。この考えは在宅医療を行うときに全ての疾患でかなり有用でした。もちろん急性期病棟でも使用できると思いますのでお勧めです。これを言語化してくれた方に感謝です。ほんとにおすすめです。

肺炎予防のワクチンには肺炎球菌、インフルエンザ、RSウイルスがあります。
肺炎球菌にはPPSV23(ニューモバックス®)、PCV13(プレベナー13®)、PCV15(バクニュバンス)、PCV20(プレベナー20®)がありいずれも不活化ワクチンです。生ワクチンは原則4週間、不活化ワクチンは原則2週間空けるとされていますが、不活化ワクチンの種類によっては同日接種したりします。
ニューモバックス®はB細胞のみの依存ですが、PCVはB細胞のみではなくT細胞も関与しているため免疫効果が高いとされていますが、カバーしている範囲が違うため一長一短です。ニューモバックス®はCOPD増悪の抑制、肺炎による入院抑制、肺炎発症抑制の効果がありますが、これはインフルエンザワクチンを接種していることが前提の効果ですので、毎年のインフルエンザワクチン接種はもはや必須のような感じです。
PCVも肺炎球菌性肺炎抑制や侵襲性肺炎球菌感染症のリスクを減らします。
莢膜型も変化していくため免疫抑制患者はPCV13あるいはPCV15接種しその後6カ月-4年以内にPPSV23を接種すると良いとされています。PPSV23接種後にPCV13を受ける場合は1年間、PPSV23後に再度PPSV23を接種する場合は5年空けることが推奨されています。

インフルエンザワクチンはインフルエンザ発症を減らし死亡抑制効果があります。重症化抑制のみと思っていましたが、発症も減らすようです。
RSウイルスワクチンは60歳以上あるいは慢性心・肺疾患ある人は接種した方が良いとされており、今後も期待が高いワクチンだと思います。しかしワクチン費用がとにかく高く、接種を進めても断れることが多いです。

肺炎予防には口腔ケアも重要で、うがいのみでは不十分で歯磨きを丁寧に行うことが大切です。

参考文献
呼吸器内科・外科学 メディカルレビュー社.
成人肺炎診療ガイドライン2024.

急性上気道感染症

急性上気道感染症とは鼻腔から喉頭の急性感染症のことで感冒、急性咽頭炎、扁桃炎、急性喉頭炎、急性喉頭蓋炎などを包括した概念です。下気道炎は気管から終末細気管支までですので、それより上部の炎症です。

感冒(風邪症候群、急性上気道炎)は上気道粘膜の感染症です。症状は鼻閉、鼻漏、くしゃみ、咳嗽、咽頭痛、倦怠感、頭痛などをきたします。飛沫感染や接触感染をで主に伝番していきます。自然寛解しない場合、副鼻腔炎や下気道感染症への移行を考慮する必要があるとされています。基本的には対症療法で経過観察で自然軽快します。ウイルスは成人ではライノウイルス、コロナウイルス、小児ではRSウイルスやパラインフルエンザウイルスの頻度が多いとされています。ウイルス疾患であるため全身の症状がでることがあり関節痛や消化器症状もでることがあります。臨床上のみで原因ウイルスを区別できることは少ないとされており、痰や鼻漏が膿性だからと言って細菌感染とは言えません。ウイルス性疾患は色々なところに症状がでますが、細菌は1つの領域に強い症状をきたすことが多いため、咽頭痛や鼻漏がないのに喀痰、咳嗽、発熱がある場合は細菌性を考慮したりします。ただその場合でも抗生剤なしで発熱が1日で収まり自然に短期で症状がよくなることもあり、細菌性とウイルス性の判断は難しいです。

ライノウイルスは飛沫感染するウイルスで潜伏期は1-2日間です。発症直前あるいは発症と同時に感染力を持ちます。成人では発熱はまれですが小児ではときどき発熱します。ウイルスであり血清型が多いため血清抗体検査での原因特定は困難です。以前臨床症状からウイルスまで推定しなさいと言われたことがありますが、私には無理です。

RSウイルスは夏季には非常に少ないです。高齢者や免疫低下患者では重症な下気道感染をきたします。潜伏期間は4-6日でウイルス排出期間は小児で2週間以上、免疫低下患者では数週間続きます。乳児でなびまん性の喘鳴をきたすことがあります。診断は喀痰や鼻咽頭スワブでウイルスの検出を確認することです。このスワブはインフルやコロナの時にもやる細長い棒です。ウイルスや検査キットによって鼻から入れるか口から入れるかは変わったりします。自分でやるときはすごくゆっくり、顔に垂直に入れていくと以外と痛くないので、私は受ける必要があるときは自分でやっています。

私は明らかな感冒でも3日以上続く発熱、咳嗽には積極的に画像検査を行います。胸部X線では小さな肺炎は分からず、胸部CTまで必要であることが多いですが、感冒症状でCT検査まで取られることは少なく肺炎の見逃しは多いと感じています。咳嗽が1カ月続くため受診されk胸部CTを撮影すると肺炎がある患者さんがいます。血液検査ではCRPやWBCの上昇はないことも結構あります。その際に抗生剤を処方すると、5日程度で良くなったりします。それは抗生剤じゃなくて時間経過で良くなったとおっしゃる先生もいるかもしれませんが、そうでしょうか。これが1カ月ではなく2か月続いた咳嗽でもこういった患者さんはいます。2か月続いた咳嗽が抗生剤で数日で良くなった場合、これは抗生剤が効果あったと言っていいのではないでしょうか。教科書的なものや論文の統計的なものはあくまで全体の傾向であり、個々の患者さんに全てあてはめるということが無理なのかと思います。

急性咽頭炎・扁桃炎は咽頭痛がメインです。咽頭発赤や扁桃腫脹、頸部リンパ節の圧痛と腫脹を確認する必要です。多くがウイルス性であるとされていますが約10%程度にA群β溶血性連鎖球菌が関与してるとされており、急性咽頭炎と診断して数日しても症状が改善せず別の医師の診察で溶連菌と診断され抗生剤を処方されたカルテを見ると悲しくなります。A群溶連菌を治療する目的は症状緩和、リウマチ熱の予防です。抗生剤はアモキシシリン、セフェム系、マクロライド系抗菌薬などで治療は10日間が推奨されています。この10日というのは大事だと思います。溶連菌の口腔内所見はEBウイルスやアデノウイルスも似ているため、Centor基準をもちいて判断します。溶連菌の迅速抗原の感度は約80%ぐらいと低いですので、Centor基準で疑って溶連菌迅速抗原が陰性の場合は判断に迷います。しかもそういった患者さんはそれないにいます。少なくともCentor基準が満点なら抗原が陰性でも抗生剤は必要と思います。

連鎖球菌は常在菌で溶血による分類(α溶血、β溶血、γ溶血)が大切で、β溶血するものはさらにA、B、C、D、E、F、Gなど(Lancefield分類)に分類しますが、Eは人間には病原性はないとされています。抗ストレプトリジン抗体(ASO)は溶連菌のキャリアのみでは上昇しないため、培養されたけど起因菌か判断がつかない場合には有用かもしれません。私は細菌は溶連菌感染後の急性糸球体腎炎を疑う患者さんがきたため提出しました。淋菌とクラミジアによる咽頭炎も忘れてはいけないです。ウイルス性咽頭炎ぽいか、違うならHIVや淋菌のリスクはあるか、再度に溶連菌を考えるともれがないと思います。淋菌やクラミジアは咽頭スワブやうがい液を用いてPCR検査などで行います。

急性喉頭炎は喉頭を侵す炎症病変で多くはウイルス性上気道炎に伴って生じます。上気道炎の症状に加えて嗄声が特徴的で直接喉頭鏡検査で診断し、治療はA群溶連菌以外では加湿と声をださないことです。この感冒症状+嗄声は結構います。個人的には嗄声がある患者さんで胸部CTを撮影したりすると肺炎があることが多いなと感じています。もちろん頻度を調べた訳ではないですが。

急性喉頭蓋炎は急速に進行する喉頭蓋とその周囲の蜂巣炎です。流涎、嗄声、stridorなどを認めます。A群溶連菌とインフルエンザ菌が多く、ウイルスが原因となるかはわかっていないとされています。窒息のリスクがあり疑ったら入院が必要です。診断は喉頭鏡で直接喉頭を観察して診断しますが、舌圧子などの口腔観察で窒息のリスクもあり、十分設備が整った状態(手術室など)で観察を行う方が良いとされています。治療は気道確保と抗生剤です。私も最近診断し救急搬送しました。その方は流涎を認めており、頸部のCTで喉頭蓋付近があやしいなと思って搬送しました。頸部のCTは個人的には読影が難しいと感じています。あまり見る機会がないからでしょうか。その後入院しましたが無事退院し、外来にお礼を言いに来てくれました。患者さんからのお礼って嬉しいのですが、お礼をされたことは結構すぐ忘れてしまいます。それ以上に診断が不明なときや症状が治らないときの苛立った態度の方が記憶に残ってしまうため、やりがいを見失うことの方が多いです。私の場合その嫌な記憶もすぐ忘れてしまいますが。

アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎はくしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉が症状で1型アレルギーによって生じる疾患で通年性と季節性に分類されます。通年性は室内塵ダニアレルギー、季節性は花粉症が多いとされています。吸入アレルゲンを調べるとスギとダニ陽性の人は結構います。ただもともと花粉症を指摘されている人は多く、初診の患者さん全員に検査をすることはないです。アレルゲン検査で陰性でも花粉の時期になると症状が出る人はいるため、その際は症状を優先して対応します。

アレルギー反応を起こす花粉が複数あると通年性の症状となることもあります。これはプライミング効果が関与しており、プライミング効果とは一度発症すると抗原暴露による症状の発症閾値が低下するため、花粉の時期が過ぎても少量の花粉で症状がでてしまうことです。外来のでは鼻漏が1年中ある人もいて、花粉の時期じゃないのに鼻漏がでるという人がいます。そういった方には通年性のアレルゲンに反応がないか血液検査で調べても良いと思いますが、あまり希望される患者さんは少ない気がします。アレルゲンの検査は費用も高いので、気軽にはあまりできないです。検査キットによりますが、3割負担で4500円ぐらいします。1回の支出が5000円程度になるとお財布には少し痛いです。私はあまりお金を使うタイプではないので、4500円だったら自分はやらないでいいやと思ってしまいます。薬剤で改善がない場合に患者さんと相談していくのが良いと思います。もちろん全て調べたいと言う患者さんもいますので、そういった時は検査をすぐ行います。

皮膚テストや血清特異的IgE検査が陰性でも鼻粘膜局所でIgEが産生され局所反応を起こすlocal allergic rhinitis(LAR)という疾患概念もあるようです。これは私はあまり知りませんでしたが、血液検査で特異的IgEが陰性でも花粉の時期に症状が出る人がいます。血液検査で多抗原を一度に調べられるものは判定量法であり定量法と比較して検査の精度が劣るため、あるいはアレルゲンコンポーネントを調べているわけではないためかなと思っていましたが、このLARであるという可能性はあるのかなと思って診療しています。この診断は誘発テストなどが必要なため、耳鼻科に任せるしかなさそうです。

アレルギー性鼻炎はくしゃみや鼻漏が多いとくしゃみ・鼻漏型、鼻閉が強いと鼻閉型として治療薬を検討します。アレルギー性鼻炎の重症度はくしゃみは1日の回数、鼻漏は鼻をかむ回数、鼻閉は口呼吸の時間の長さで判断します。くしゃみの回数、鼻をかむ回数、口呼吸の長さ、、、これを覚えている人はいるのでしょうか。。。ざっくりと症状が辛ければ重症に準じて治療を行い症状が改善したら薬剤を減らしていく方が患者さんには良いかもしれません。ただ毎年症状が出ている人が多いため、すでにこの薬を毎年使っていますという患者さんも結構いるためその薬を処方することも多いです。効果が乏しくなれば別の抗ヒスタミン薬に切り替えたりします。

アレルギー性鼻炎は1998年から20年間で有病率が約30%→50%と増加している(松原篤ほか.日耳鼻.2020;123;485-490)とされています。私は鼻炎持ちではないですが、鼻炎の妻を見ていると本当に辛そうです。この辛い病期の有病率が50%とは、恐ろしいです。

Allergic rhinitis and its impact on asthmaではアレルギー性鼻炎には経口抗ヒスタミン薬より点鼻ステロイド薬を推奨しているようです。点鼻ステロイドは使用に少し抵抗があるかもしれませんが、点鼻血管収縮薬と違い使用にためらう必要はなさそうです。

アレルギー性鼻炎の治療は抗原回避、薬物、アレルゲン免疫療法、手術がありますが、抗原回避と薬物療法は一般のクリニックでも行えます。私の勤務先ではすでに手一杯であるためアレルゲン免疫療法はできませんが、行える医療機関が近くにあり適応があれば積極的にやった方が良いのかなと思います。

抗原回避は花粉は結構難しいと思います。花粉の多い日には外出を控える(仕事をしている人にはほぼ無理でしょう)、マスク、眼鏡をするなどが良いようです。殺ダニ剤はダニが死んでもアレルゲン活性が残存することや吸入すると人体への影響もあることからダニ抗原回避目的では推奨されていません。こういった煙タイプの防虫剤を行った後に家中の窓を開けて空気の換気をする瞬間が好きですが、私だけでしょうか。ダニが発生しないように部屋の湿度は60%以下が良いようです。60%ってすでに結構高いと思いましたが体感はどの程度なのでしょうか。部屋の湿度が60%になったときにこの記事のことを思い出してみようと思います。

第2世代抗ヒスタミン薬は連用により改善率が上がります。そのため頓用で使用するよりは症状に限らず毎日服用がよさそうです。ただ患者さんによっては症状が出た時だけ使用している人もいるため、そういった人には今まで通りの使い方で継続したりもします。レボセチリジン、ルパタジンは増量が可能とされています。抗ヒスタミン薬を使用するときは自動車運転に注意するよう説明が必要で説明してテンプレート化された文章をカルテに記載しておくことが大切です。フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン、ビラスチン、ルパタジンはエリスロマイシンとの併用で血中濃度が上昇します。私は喘息でエリスロマイシンを使用することが結構あるため、注意しています。

Th2サイトカイン阻害薬(スプラタスト)はくしゃみや鼻漏より鼻閉に効果があるようです。私はあまり処方していない(単に使い慣れていないため)のですが、今後鼻閉型の人がいたら積極的に使用してみようと思います。

点鼻ステロイド薬は吸収されにくいため、1年以上の使用でも全身の副作用は少なく(ベクロメタゾンは除く)、長期連用により改善率は上がり、炎症の初期からの使用で症状が抑制できるため早期から開始するができます。私は点鼻ステロイド薬は連用で耐性ができると勘違いしていました。小さいころに誰かに聞いた記憶があるのですが、間違っていたようです。今では気軽に処方しています。

プランルカストは白血球減少、間質性肺炎、好酸球性肺炎などの重大な副作用に注意です。モンテルカストは血管浮腫や中毒性表皮壊死症に注意。いずれも重大だが頻度は少ないです。モンテルカストは精神症状の注意も必要でありますが、プランルカストは1日2回内服が必要なのでどちらを使うかは現時点では好みで良いのかなと思います。

全身性のステロイド薬はセレスタミン®(抗ヒスタミン薬とベタメタゾンの合剤)やメドロール®が用いられることが多いです。点鼻と経口でステロイド薬の効果は同等とされているため、できれば点鼻が良いと思いますが、もちろん点鼻薬でもダメな人はいます。そういった方には内服ステロイドを処方することがありますが、効果がなければ中止し耳鼻科に依頼をした方が良いと思います。ただそういった方は耳鼻科でも結局改善せずドクターショッピングを繰り返したりします。保険適応外であることを説明し抗ヒスタミン薬の倍量を投与したりしますが、それでダメなら私はお手上げです。

オマリズマズを使用するときは抗ヒスタミン薬は併用が必要です。喘息や好酸球性副鼻腔炎で生物学的製剤を使用することがありますが、アレルギー性鼻炎に対しての生物学的製剤の使用経験は私にはないためイメージがあまりつきません。

点鼻用血管収縮薬は連用で効果減弱、鼻粘膜の腫脹(薬物性鼻炎)をきたすため使用は10日程度までに収める必要があります。これはを使う必要があるときは耳鼻科行ってくださいと言います。

舌下免疫療法にはダニとスギがあり、使用する薬剤毎にe-ラーニングが必要です。口腔内の副作用は通常数週間で自然軽快するとされています。ダニとスギを併用する場合は開始を4週間空けるようです。5歳未満では安全性が不明とされているので使用しない方が無難と思います。私も使用しようとしてe-ラーニングを受講しましたが、結局そこまで手が回らないため使用していないです。

薬物性鼻炎の原因として気管支拡張薬やNSAIDs、ピル、点鼻用血管収縮薬があります。呼吸器疾患で気管支拡張薬を使用することが多いため、注意が必要と思いました。ガイドラインを読むまで知らなかったです。

熱い食事で鼻症状がでる鼻炎は味覚性鼻炎。高齢者では鼻粘膜の萎縮によって老人性鼻炎となるようです。高齢者でずっと鼻漏があり、いろいろ薬を使用しても改善しない人がいますが、これなのかもしれないです。老人性鼻炎は鼻閉やくしゃみがなく改善が難しいようですが、体をあっためたり、当帰芍薬湯が良いかもしれないようです(市村恵一.JOHNS 2012 ; 28: 1352―1356)。

アレルギー性鼻炎は鼻の掻痒を伴うことがあるが急性鼻副鼻腔炎や慢性非好酸球性鼻副鼻腔炎ではくしゃみはでないようです。急性鼻副鼻腔炎でもくしゃみしている人がいるような気がしますが、教科書的にはでないようです。別の病態を合併しているからなのでしょうか。。

★通年性アレルギー性鼻炎の治療例

①症状が軽い

ビラノア®、スプラタスト®、リザベン®、ナゾネックス®のいずれかを使用

②中等症でくしゃみと鼻漏がメイン

ビラノア®+ナゾネックス®

③中等症で鼻閉メイン

モンテルカスト+ナゾネックス®

★花粉症

①症状が出る前

ビラノア®またはナゾネックス®

②軽症

ビラノア®またはナゾネックス®

③中等症

ビラノア®+ナゾネックス®±モンテルカスト

④重症

ナゾネックス®+ディレグラ®±ステロイド経口1週間

アレルギー性結結膜炎で点眼ステロイド使用する際は眼科へ眼圧測定依頼。

漢方の大青竜湯や小青竜湯も使える。

参考文献
鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版

小児喘息

喘息は気道の慢性炎症を特徴とする疾患であり、気道狭窄が発作性に生じるため、咳嗽、呼気性喘鳴や呼吸困難を繰り返します。
この気道狭窄は気管支平滑筋収縮、気道粘膜浮腫、気道分泌亢進が原因とされています。やけに感冒での受診が多いなと感じたりするときに疑うこともあります。

遺伝的な因子に加えて、アレルゲンや感染、受動喫煙、大気汚染などの環境因子により気道の炎症が生じ、気道の炎症が気道リモデリング、気道過敏性を惹起し気流制限をきたすことで喘息の症状が出現するとされています。喘息の炎症は2型炎症と呼ばれ好酸球やマスト細胞、2型ヘルパーT細胞のみではなく、自然免疫系の2型自然リンパ球(ILC2)が原因となることが明らかとなっています。2型炎症がlowなタイプも存在します。
血液検査で好酸球の上昇があまりない場合やFeNOが低値の場合、血清特異的IgEが低い場合はこの2型炎症がlowなタイプを疑いますが、そもそも喘息なのか疑わしいけどその他の疾患っぽくもないなぁと考えながら治療して経過を見たりします。そういった時に生物学的製剤をやってもあまり効果が乏しいのかなと感じます。

JPGL2023では乳幼児喘息は5歳以下であり、IgE関連喘息とウイルスや受動喫煙、冷たい空気などで誘発される非IgE関連喘息と分類しました。感染などで喘鳴を繰り返す反応性気道疾患と一過性初期喘鳴群を喘息と診断しないように喘鳴エピソードが3回以上繰り返すことを診断の目安としています。喘鳴は急性と反復性に分けて鑑別を考えると良いとされております。

RSウイルスやライノウイルス、ヒトメタニューモウイルスは喘息発症に関与しているともされています。喘息の診断は反復する喘鳴のエピソードが3回認めることが重要とされています。運動や呼吸器感染症、アレルゲン吸入、気候変動などで症状が反復することを病歴で確認できれば喘息と診断できることもあります。細気管支炎などでも喘鳴は認めまるため、すぐに喘息と診断しないことが重要というのも分かりますが、以前から咳嗽をずっと繰り返していたという親からの訴えを聞くことも多いです。その場合は慢性鼻副鼻腔炎による咳嗽が持続しており、そこに細気管支炎を合併した場合などでも矛盾はないですが、正直診断はすごい難しいと感じます。もちろんこの診断基準も絶対ではないです。喘鳴がなくても喘息と診断できることも多いです。喘鳴のエピソードを3回認める前に、治らないとの理由で他院を受診してしまうケースもあると思います。私の外来でも、他院で咳嗽をずっと見てもらっているけど全く治らないと言って来院する患者さんがいます。その先生の気持ちはすごい分かります。咳嗽が不得意な先生で対処法が分からない先生でも、咳嗽が得意な先生でも、最初は経過観察するためあまりあまりやることは変わらないと思います。説明の仕方が重要と書いてある本も多々ありますが、いくら丁寧に説明しても限界はあります。

喘息と過大診断しないことも重要ですが、喘息を見逃さないことも重要です。咳嗽を反復する場合は繰り返す上気道炎と片付けずに吸入の効果を見てみることも重要です。喘鳴を反復して6歳までに気道リモデリングが生じるとその後呼吸機能は改善しないとされているからです。しかし、吸入ステロイド薬(ICS)を初期から導入しても喘息発症抑制効果はなく呼吸機能改善効果もないとされており難しいところです(かと言って放置はできませんが)。小児期の喘息の管理がうまく行えないと成人喘息への移行や呼吸機能低下をきたす可能性がありますが小児期のICS治療によってそれが防げるかも不明です。


喘息の病型にはアトピー型と非アトピー型があり、吸入アレルゲンに対する特異的IgE抗体を証明できればアトピー型、証明できなければ非アトピー型とします。小児の採血は難しいため、忙しい外来では採血まで手が回らないこともあります。小児科の先生は採血に慣れているため、実施が難しければ採血の依頼をお願いすることも考慮してもいいかもしれません。吸入アレルゲンは喘息発症のリスクになりますが、食物アレルゲンは特殊な例を除きリスクになるかは現段階では分かっていないため、まずは吸収アレルゲンを調べれば良いと思います。また、現在は衛生状態が良いため肺の細菌叢が発達しないことが喘息発症に関与するという説があります。私は小さいころは田舎育ちで自宅はあまり綺麗ではなく、犬や猫を飼っていたため衛生状態はあまり良くなかったと思いますが、小児喘息を発症し中学生で寛解。その後30歳頃に再燃しました。

小児の呼吸機能検査では日本の小児呼吸器学会の1秒率の基準値は80%以上、米国では1秒率は85%以上が正常のカットオフ値となっており、FeNOのカットオフ値は35ppbとなっています。このFeNOは気道感染で高値となり、喫煙や発作時は低値となるとされています。強制オシレーション法で呼吸抵抗を調べたりしますが、小児は呼吸抵抗が著明に高値な例が多いと実感しております。そのため検査の信ぴょう性を疑いながら日々過ごしています。

小児喘息の治療は長期管理薬が未使用の場合は重症度に合わせて治療ステップを決定し薬剤を選択します。5歳以下、6歳~15歳と年齢で治療の選択肢が異なります。JPGL2023では5歳以下でも中用量ICS/LABAの記載があり(生後8カ月以上から適応あり)よりいっそうICS/LABAが使用しやすくなりました。6歳以上からテオフィリン、生物学的製剤が使えるようになります。3か月以上コントロール良好であればステップダウンを検討します。ICSは喘息症状の軽減や増悪抑制、気道過敏性などを改善させるが、小児喘息の寛解率上昇に関してはデータを示せておりません。普段の咳嗽は落ち着いても運動時の喘鳴は少し改善に時間がかかる印象がありますが、ICS/LABAを使用続けていると良くなる症例が結構あります。少し気長に治療を継続することが大切と思います。

小児喘息が青年期までに寛解するのは30%程度であり、青年期以降で生理的以上に呼吸機能が低下する例があり生涯にわたり注意する必要がありそうです。

女性特有ですが、月経3日前から体液量が増加し気管支粘膜の浮腫で月経喘息が生じることがあります。女性で月1回ほど苦しくなる時がありますなどの訴えがあるときは月経との関連を聞いてみてもよさそうです。

神経発達症にはアレルギー疾患の合併が多いとされていますが、吸入の手技獲得が難しいことが時折あります。成人であればブリーズヘラーも選択肢となりますが、小児では適応がないためチャンバーを使用しての吸入を考慮します。

運動誘発気管支収縮は気道の水分喪失による浸透圧上昇で炎症性メディエーターなどが遊離され気管支平滑筋が収縮するもので運動負荷検査で診断しますが、普段の臨床ではそこまでやらず診断しています。普段の吸入に加えて運動30分前にSABAの吸入を指示しますが、私の外来ではやらない患者さんかなり多いです。やる人の方が圧倒的に少ないです。

鶏卵アレルギーによるワクチンの重篤な副反応の報告はなく気にせず摂取することができます。初めてインフルエンザのワクチンの問診をしたときに、鶏卵アレルギーがある人が来て焦ったことがあります。その方は毎年接種しているとのことで接種可能としましたが、結局全く気にする必要はないみたいです。

手術前は無発作で1カ月過ごし、上気道炎罹患後は症状改善から3週間以後に手術することが勧められています。手術30分前にSABA使用も良いとされています。

ICSは咽頭刺激感や嗄声、口腔カンジダ、咳嗽などの副作用がありうがいが必須です。吸入薬の副作用は、成人ではかなり多いです。全身性の副作用が少ないことが強調されてますが、嗄声や喀痰が絡む感じ、喉に違和感がある、喉が痛いなどかなり訴えが多いですが小児ではあまり言われることがありません。あってもあまり気にならないのかもしれません。スペーサー使用の時は口の周りも綺麗にした方が良いと思います。JPGL2023に記載があったのですが、ICSで肺炎のリスク増加が言われているが、呼吸器感染との関連性はないとのメタ解析もある(Cazeiro C,et
al.Pediatrics.2017.139.e20163271.)みたいです。これは知らなかったですが、実際の診療ではやはり吸入薬使っている人で肺炎はよく見ます。かなり高用量のICSでは副腎皮質機能低下に注意(Todd GR,et al.Arch Dis Child.2002.87.457-461.)が必要ですが、小児では最近はICS増量よりは生物学的製剤の追加に舵をきっている感じがします。

ロイコトリエン受容体拮抗薬はモンテルカストは精神症状に関して添付文書の記載がありますが、あまり臨床で実感はしないです。私が見逃しているだけなのでしょうか。。。

喘息ではダニや動物の毛などのアレルゲンの暴露や喫煙や大気汚染などの環境、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの併存症により治療の経過がうまくいかないことがあります。喘息によってインターフェロンの低下やウイルス受容体によってウイルス感染が増え発作につながる可能性があるため、ワクチン接種や感染予防が重要です。JPGL2023の中には年に1度の大掃除が必要と記載があります。明らかな鼻漏や咽頭痛、発熱があれば分かりやすいですが、喘息の咳嗽なのか感染なのか、吸入薬の副作用なのかは判断が相当難しいです。今まで家族みんなでなんで大掃除やるのかと思っていましたが、確かにダニの死骸などは減るのかなと思いました。昔は家族内で喘息は私のみでしたので、私のためでもあったかもしれません。
ピークフローの毎日の測定も治療効果確認の参考になります。
アレルギー性鼻炎と喘息の相互作用も言われており療法の治療を意識することが大切です。アレルギー性鼻炎では点鼻ステロイド薬や抗原回避などが重要であり、同時に診る姿勢が大事ですね。
鼻副鼻腔炎は喘息が治りにくくなる原因として重要で抗菌薬治療や好酸球性副鼻腔炎の評価が重要だが、小児では好酸球性副鼻腔炎は少ないとされています。難治性の咳嗽の小児で頭部CTで両側篩骨洞に陰影を認めて末梢血血液検査で好酸球増多があり耳鼻咽喉科に紹介したことがありますが、生検もなしで好酸球性副鼻腔炎は否定されていました。
胃食道逆流症では胃酸が迷走神経を刺激して咳嗽がでたり、逆流内容物を誤嚥することにより咳嗽がでます。小児喘息との合併も比較的多いため3か月程度PPIを併用することも選択肢で小児ではエソメプラゾールが保険適応があります。胃酸により咳嗽がでると親に説明しても、あまり納得されない方が多いです。ただ確かにPPIを処方しても、咳嗽が改善することは少ない気がします。

肥満では吸入治療の効果が減弱するため運動での減量が必要です。

喘息発症予防には受動喫煙の回避、肥満改善、1歳までの抗菌薬を控えることが重要ですが、親が喫煙していることは多いです。

発作時はSABA単独ではなくICSも同時に吸入するようにすることが重要とされています。

喘息の急性増悪では呼吸不全に至る可能性や気道内圧や肺胞内圧上昇によって縦隔気腫や皮下気腫などを生じるair leak症候群をきたす可能性があり、早期に治療を開始し気道内圧や肺胞内圧を下げる必要があります。SABAの吸入は20-30分間隔で3回程度までは使用するのにためらわないことが重要です。ネブライザーの吸入液はJPGLでは乳幼児は0.3mlで学童期以上は0.3-0.5mlが推奨されているが保険適応があるのは0.3mlのみです。SABAは家庭で使用することをためらう必要はありませんが、薬はできれば使わない方が良いかと思って使わなかったと言う人が時々います。こう言った方には繰り返し説明しても、伝わらないことが結構多い印象です。
全身性ステロイドは防腐剤のパラベンやコハク酸エステルでアレルギー反応をきたすことがあります。メチルプレドニゾロンは乳糖を含んでおり牛乳アレルギーにも注意が必要です。使用する前に問診が必要ですが、テンプレート化しておかないと忘れてしまうため、ステロイド投与前の確認事項として看護師さんとチェックリストを作る方が確実です。イソプロテレノールはβ1、β2刺激作用があるためβ1刺激による循環器系の副作用に注意が必要です。テオフィリンは痙攣既往や中枢神経系の疾患がある小児には使用しないようにします。

喘息発作時には呼吸抑制リスクがあり中枢性鎮咳薬の使用は控えます。麻薬性の鎮咳薬は使用してはいけないとされています。鎮咳薬は否定的な意見も多々あり、使用しない方が良いと思う場面も多いです。が、患者さんが納得しません。何度説明しても納得しません。その際はリスクは説明し少量で処方するほうにしています。

発作時はおおまかにSpO2で発作強度を推定します。96%未満であれば中発作以上で91%以下なら大発作とざっくり考えます。大発作では入院を考え対応します。喘鳴の強弱だけでは発作強度は判断困難で全身状態を見て総合的に決めます。酸素と表情と呼吸数が結構重要と考えています。

症状が5年間なければ臨床的治癒、肺機能も改善すれば機能的治癒と判断しますが、繰り返す上気道炎なのか慢性副鼻腔炎なのか喘息なのか、いつも迷って外来をしています。

参考文献

小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2023.日本小児アレルギー学会.協和企画.

高瀬真人.小児の肺機能検査のスタンダード 日本人小児スパイログラム基準値とカットオフ値.日本小児呼吸器疾患学会雑誌2010

National Asthma Education and Prevention Program. J Allergy Clin Immunol.2007.

Calpin C,et al.J Allergy Clin Immunol.1997.100.452-457.

Childfood Asthma Management Program Research Group,et al.N Engl J Med.2000.343.1054-1063.

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